日本時間 2023年 2/24、CoinBaseはイーサリアムのL2ブロックチェーン開発を展開していることを発表しました。
・誰でもどこでもdapps(分散型アプリケーション)をオンチェーンに構築可能な環境を開発者に提供
・「オンチェーン(on-chain)」を次世代のオンライン(online)に位置付け、次の10億人のユーザーをクリプトの経済圏に取りこむことを目標
・Optimismの「OP Stack」を採用、Optimismを搭載したモジュラー式かつロールアップに依存しない「Superchain」を作成することも視野
これらの目標を達成するために、BaseはCoinbaseの一製品であると同時に、
だれもが構築可能なオープンなエコシステムを提供する予定とのことです。
名称は【Base】
同じくイーサリアムのL2【Optimism】の背景にあるOP Labsの技術『OP Stack (OverPowered Stack)コードベース』を採用しているとのことです。
https://optimism.mirror.xyz/2jk3D1Y8-hid8YOCUUa6yXmsyzNCYYyFJP0Nhaey9x0
OP Stackとは、次世代アーキテクチャの一連のモジュールのこと。
ここで『アーキテクチャ』という聞きなれない用語が出てきたので解説すると、
ブロックチェーンの『アーキテクチャ』とは、分散型データベースの構造であり、ブロックチェーンの構成要素や仕組みのことです。
『モジュール』とは、「構成要素」「交換可能な部品」としての意味合いで使われます。
またOP Stackの登場は、遠い未来に互換性の高いL2やL3が爆発的に普及する第一歩になると紹介しており、
簡単にまとめると、
『OP Stackとは、L2やL3などの次世代ブロックチェーンの構造、構成要素を、互換性のある部品などに置き換えても同様に動作させることができる技術』
という理解ができます。
今後、たくさんのL2のブロックチェーンが開発される未来が来るとしたら、いちいち違うチェーンごとのアプリや通貨のチェーン移動をしなくても、簡単に実行できるようにする仕組みづくりですね。
もう一つ重要な単語「Superchain」がありました。
Baseにおける「Superchain」とは、OP Stackをベースに作成されたチェーンを総じた一つのネットワークのことであり、
複数のブロックチェーンを組み合わせて、単一の大きなブロックチェーンを作成するアーキテクチャで、
スケーラビリティ(拡張性)と相互運用性の問題を解決するために使用されます。
つまり、異なるブロックチェーン間でトークンやデータを移動する必要がある場合、スーパーチェーンを使用することで、それらを容易に移動できます。
複数のチェーンで構築されていたとしても、チェーン間の相互作用によってユーザーは1つのチェーンのように感じれることができるということです。
要するに、
OP Stackの技術で、互換性が高く、様々なチェーンとの相互作用が可能なネットワークであるSuperchainを構築することで
・システムの拡張性が向上
・トランザクションの処理能力が向上
・ブロックチェーンネットワーク全体のパフォーマンスが向上
・システムの複数の要素を組み合わせることができる性質が向上
・アプリケーションやスマートコントラクトの再利用性が高まる
といった、L2の拡張性と、L1の堅牢性という良いとこどりを組み合わせたシステムです。
Baseは、自分たちを含めた特定のL2が「支配的」になり、すべてのアクティビティを吸収していくことで、ほぼ独占状態になるというテーゼのもと、このプロセスをスタートしました。
たとえば、もしCoinbaseが独自の経済圏を構築するためだけにチェーン開発をすすめたら、
将来的にCoinbaseのアプリやそれらのユーザーが、ブロックチェーンエコシステムの大半から切り離される危険性があるということを考えたようです。
そのために多くのL2が活動を大きくしていく中で、異なるエコシステムのハブとして機能し、徐々に相互運用性を高めていくことで、Ethereumと共同で拡張する「Superchain」を形成するということです。
Ethereum やEthereum L2、さらにはBitcoinやSolana、Conmosといった他のL1エコシステムと深くつながる橋にすることも目標に掲げています。
『自分たちだけのチェーン開発では明るい未来が開けないから、将来必ず来る(と信じている)ブロックチェーン全体の市場をデカくすることに貢献する。その上で自分たちの存在感を大きくするぞ。』
といったような道を選んだということでしょう。
Base上に構築する予定のプロジェクトもすでに決まっており、
Blockdaemon、Chainlink、Etherscan、Quicknode、Aave、Animoca Brands、Dune、Nansen、Magic Eden、Pyth、Rainbow Wallet、Ribbon Finance、The Graph、Wormhole、Gelato などの、
暗号ビジネス、プラットフォーム、マーケットプレイス、およびインフラストラクチャ企業です。
またBase は、Coinbase の取引所、ウォレット、NFT マーケットプレイス、および開発者向け製品に統合され、
Ethereumを超えたエコシステム内の他のブロックチェーンと相互運用できるようになる予定とのことです。
この様な壮大なプランを掲げているBaseですが、果たして可能なのでしょうか?
Baseの強み
Baseの強みは、Coinabaseのユーザーをクリプトの経済圏への引き込められることであり、
ユーザーとその資産をBaseに持ち込むことは、エコシステム全体で広くクリプトの経済圏にアクセスするための足がかりになると考えています。
そのロードマップとして、Coinabaseにおける次のフェーズはこの様なものです。
『オープンな金融システムのアプリを構築(10億人)
既存の金融システムをオープンなネットワーク上で再構築することで、
新規参入ユーザーがグローバルにアクセスできるインターフェースを作る必要があります。
以下のものがこのフェーズにおいて必要なアプリやコンポーネントだと考えています。
・ローン(住宅ローン、中小企業向け融資、マイクロローンなど)
・ベンチャーキャピタル(シードVC、トラディショナルなVC、ベンチャーデットなど)
・投資(株式、インデックス、預貯金など)
・アイデンティティとレピュテーション(ID、認証、信用スコアなど)
・送金(特にクロスボーダー決済)
・マーチャントプロセッシング(POS、インターネット注文)』
これらをすべて実現できたら、ブロックチェーンは本格的に社会に普及することになります。
しかしこれを実現するには、オフチェーンである実社会をブロックチェーンを繋ぎ合わせる必要があります。
その開発を進めているプロジェクトが『Chainlink』です。
RWAに取り組むChainlink
Chainlinkとは、ブロックチェーンネットワークにオラクル機能を提供する分散型プロトコルです。
オラクルとは、ブロックチェーン上で実行されるスマートコントラクトが実社会のデータやリソースにアクセスするための機能です。
また【RWA】と言われています。
マナブさんのツイートでとても分かりやすく解説してくださっています。
例えば、ブロックチェーン上のスマートコントラクトが、天気予報や株価などの外部データを参照する必要がある場合、Chainlinkのオラクルプラットフォームを使用して、そのデータをブロックチェーン上のスマートコントラクトに提供することができます。
Chainlinkは、DeFi(分散型金融)分野やIoT(モノのインターネット)分野など、様々な分野で活用されています。
Chainlinkのプロトコルは、複数のデータソースからデータを取得し、それらのデータを結合して、1つの信頼性の高い結果を提供します。
また、スマートコントラクトに対して認証済みのデータを提供するための信頼性保証機能を提供し、安全性を確保します。
そして、これらRWAに取り組むChainlinkとCoinbaseは提携しており、暗号資産市場におけるデータフィードの信頼性と透明性を高めることを目指しているのです。
具体的には、Chainlinkはブロックチェーン上で実行されるスマートコントラクトに必要な外部データを提供し、CoinbaseはChainlinkを通じて取得された価格情報や取引履歴などのデータフィードを使用して、信頼性の高いプラットフォームを提供しています。
また、ChainlinkはCoinbaseのステーブルコインであるUSDCの価格フィードを提供。
これにより、USDCの価格が正確に反映され、より信頼性の高いデータが提供されています。
NFT市場において、ChainlinkとCoinbaseの協力により、
NFTの評価やトランザクションの実行に必要な価格情報や、その他のデータがオラクルを通じて提供されるため、市場の透明性と信頼性が向上すると期待されています。
また、NFT市場における流動性の向上にも貢献することができます。
つまり、
『Coinbaseは、イーサリアムの分散性、セキュリティの高さと堅牢性、トランザクションなどあらゆるデータ転送の高速化、低価格のガス代、異なるブロックチェーン間でのトークンやデータ移動の容易化など、現状のブロックチェーンネットワーク全体で起こっている問題を解決し、
Chainlinkの、ブロックチェーン上で実行されるスマートコントラクトが現実社会のデータやリソースにアクセスするための機能を活用して、
現実社会とブロックチェーンを繋げる。ブロックチェーンにおける社会インフラの構築に取り組んでいく。』
ということです。
これだけではなく、ChainlinkとCoinbaseはオンチェーンの支払いをオフチェーンで済ませる開発も進めているため、NFTの二次売買もクレジットカード決済が可能になったり、
Dappsの利用もWeb2のApps(アプリ)のようにサクサク使えるようになってくることも期待できます。
また不動産や株、インデックスなどの投資マネーや、年金やローン融資、証券など
あらゆる金融や資産のトークン化は、数兆ドルの現実世界の価値をブロックチェーン ネットワークにもたらす可能性を秘めているといわれています。
特に年間 9 兆ドル規模のグローバル証券業界と 、9.6 兆ドル規模のグローバル不動産業界を破壊する能力を有すると結論付けており、
マイクロソフト、バンガード、サザビーズ産業資産、証券、不動産をそれぞれトークン化するプロジェクトを発表または開始しています。
ここまでの話で、CoinbaseのL2【Base】開発の発表が、ブロックチェーン業界にとってどれだけ大きな出来事であり、可能性を秘めているかが分かります。
さらにCoinbaseは、BlackRockと提携しており、機関投資家に暗号資産の取引・管理サービスを提供しています。
【BlackRock】
アメリカの投資会社、資産運用業界で最も大きな企業
BlackRockとはアメリカの投資会社であり、資産運用業界で最も大きな企業の一つで、
世界中の機関投資家や個人投資家の資産を運用しており、その運用資産残高は8.59兆米ドル(約1,134兆円)に上ります。
BlackRockは、アメリカ政府と関係を持っています。
たとえば、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)や米国財務省と協力して、金融市場の監視や政策の策定を支援しています。
また、CEOであるラリー・フィンク氏は、アメリカの政治家や政策立案者とも積極的に交流しています。
Coinbaseは上場企業でもあるので、実質的に米国政府との連携を取れるポジションにいるでしょう。
Baseの開発が成功すれば、ブロックチェーンが現実社会に溶け込むことへ大きく前進することであり、大きな経済的発展、カルチャーの進歩、時代が進むのです。
Web3が全てとは思いませんが、実社会生活において人々の選択肢が増えることは喜ばしいのではないでしょうか。
さて次回はいよいよNFTの未来予想図です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考
https://www.coinbase.com/blog/introducing-base
https://ozonlabs.xyz/articles/13
https://blog.chain.link/asset-tokenization-bringing-real-world-value-to-the-blockchain/