焼け野原か、新たな市場か。
マーケットプレイスの覇権争いは、NFT市場にとって大きな変革をもたらします。
この記事のポイント
・OpenseaやBlurは、実質的には中央集権であり、クリエイターやコレクターは彼らの決定に振り回されている。
・クリエイターフィーに関しては2020年から問題視されていた。
・Openseaの覇権をBlurが切り崩した。
・市場はクリエイターの望みに反してタダ乗りを選んだ。
・短期的な抗争を激化させれば、市場が崩壊する可能性もある。
この記事では、これまでの各主要マーケットプレイスの主な動きを振り返りながら、実際のデータや影響力者らの発言を引用し、最後に私の見解を述べています。
2023年2月現在、Web3ではNFTマーケットプレイスによる競争が激化しており、スペース全体で波紋を呼んでいます。
OpenseaやBlurといった主要マケプレは実質的に中央集権です。
ウォレットで承認する時は、同じコントラクトのNFTの全てを許可する必要があり、それはOSに委ねる形です。
すなわち私たちがOS上でNFTを売る際には、 彼らが自由に私たちのNFTを動かせるように、承認をしなければならない仕組みです。
そして、クリエイターフィーの設定も、Openseaが定めた規格に沿う必要があり、 それは実質的にクリエイターがOSに権利を握られている状態です。
しかしそのことは、2020年から何度も問題視されていました。
2021年には当時の主要マケプレが協定を結ぶ様な形も取られました。
2021年の世界的なNFTバブル以降、OpenseaがNFTの取引量を他のマーケットプレイスよりも圧倒しており、覇権を握るような状態が続いていました。
これには以前より、コレクターやクリエイターの一部から批判的な意見もありました。
2022年1月には、Openseaの対抗馬としてLooksRareなどの新しいマーケットプレイスも誕生し、コレクターはこれまでのOpenseaの取引量に応じて$RAREをエアドロップするなど、いわゆるバンパイアアタックも仕掛けましたが、Openseaの牙城は崩れませんでした。
そして2022年10月に、Blurという新たな対抗馬となるマーケットプレイスが誕生しました。
Blurは取引手数料0%、クリエイターフィーは購入者が任意でその金額を決定する、オプション設定という『NFTトレーダーにとって非常に便利な基本設計や設計思想』を採用し、物議を醸しました。
NFTスペースにおいて最も著名で影響力を持つ、Deadfellazの共同制作者であるBETTY氏は、各マーケットプレイスの動向についてこう述べています。
『この動きはクリエイターの権限を奪い、彼らの作品がどのように購入されアクセスされるかを決定する権利を奪うものである』
彼女によると、
『クリエイターは自分の作品のロイヤリティを設定し、マーケットがそのクリエイターから購入するかどうかを決定するべきであり、マーケットプレイスは、クリエイターから力を奪って、介入し、混乱を引き起こす権限を持つべきではない』
との見解です。
しかし、市場はクリエイターの望みに反するかたちを選びました。
Blurの『トレーダーにとって便利な基本設計』を利用した人々は、初めは支払いを選択していましたが、時間が経つにつれて、ほとんどの人が0%に移行し、タダ乗りを選ぶ傾向があるということが明らかになりました。
さらにBlurは$BLURのエアドロップ後、クリエイターフィーに関する新しい発表を打ち出しました。
・OSをブロック:Blur クリエイターフィー全額、OS 取引不可
・ブロックしない(両方OK ):両方でクリエイターフィー全額
これは、BlurからOpenseaに対する完全なる攻勢です。
Openseaはそれに応じて、Twitterのスレッドで取引ごとに上乗せされている2.5%の手数料を期間限定でゼロにすることを表明しました。
11月に発表された物議を醸した計画に続いて、OpenSeaは、オンチェーン執行ツールを使用しないプロジェクトを任意のロイヤルティに移行すると発表しました。
これにより、買い手はクリエイターのロイヤリティを、任意でその金額を決定するオプション設定ができます。
しかし、最初のNFTセールの後、多くのクリエイターにとってロイヤリティが重要な収益源であるため、この決定は深刻な問題となっています。
OpenSeaは、『同様のポリシーを持つマーケットプレイスがプラットフォームの事業者フィルターでブロックされない』ことを述べ、
『Dune AnalyticsのレポートからNFTの総取引量の80%が、手数料無料のプラットフォームに起因していることが明らかになった』と発表しました。
そして
『NFTのエコシステムには大きな変化があり、クリエイターの収益を完全に強制しないNFTマーケットプレイスに、有意義な取引量とユーザーが移動することが確認されました。
そして、Blurがクリエイターの収益を引き下げることを決定し、クリエイターにBlurかOpenSeaかという誤った選択を強いたことから、私たちの試みが成功しなかったことが明らかになりました。』と述べています。
クリエイターからの反応は、この様なマーケットプレイスの動きについて厳しいものでした。
Nyan Catを制作したデジタルアーティスト、Chris Torres氏は、OpenSeaが自分たちの利益のためにアーティストを搾取していることをほのめかすツイートを投稿しました。
デジタルアーティストで3DアニメーターのNessGraphics氏は、クリエイターのロイヤリティを任意にする動きを「哀れ」と表現しました。
BETTY氏はロイヤリティ問題について以前より強く訴えており、
『支払いたくない人がいる場合は、ロイヤリティを設定しないクリエイターから購入することができます。
彼女はまた、このエコシステムに参加することは、それぞれがどのように参加するかを選択する権利を持っていることを理解することが重要である』
と主張しています。
一方で、自称NFTの歴史家であるLeonidas氏は、今回の発表が理にかなっていると指摘し、暗号市場が適切な比較対象であるならば、NFT空間が必然的に行き着く先はここだと述べました。
彼は、「人々はこれを好むか好まないかは自由だが、結局のところ、非可溶性市場が成熟すれば、成熟に10年を要した完全スケールの可溶性トークン市場と同じ0.25%の手数料で着地することになるだろう」と書いています。
DeGodsチームのFrank 氏は、「厳しい現実です。NFTマーケットプレイスは、より大きなVCラウンドを調達できるように、マーケットシェアを最大化しようとしており、マーケットシェアを得るための最良の方法は、高頻度取引の手数料を最も低くすることです」と述べました。
https://nftnow.com/news/breaking-opensea-announces-major-changes-to-fees-and-creator-royalties/
最も明白なのは、 $BLUR が流動的になった今、Blurがどれだけの市場シェアを維持できるかということです。
短期的には、トークン インセンティブ プログラムのシーズン 2 があと 30 日間実行されるため、取引量が大幅に減少するとは考えにくい状況です。
OpenSeaは、取引量が減少しているにもかかわらず、約半数のユニークデイリーユーザー(48%)を維持しています。
これは、OpenSeaが引き続き新しいNFT購入者の出発点であることを示しており、OpenSeaでコレクションを閲覧する方法は、よりユーザーフレンドリーです。
一方で、Blurの基本設計や設計思想は、プロのNFTトレーダーにとって非常に便利です。
2月19日0時の時点では、Openseaが約7,700ETH、Blurが約56,800ETHの取引量という圧倒的な数字を上げています。
https://dune.com/sealaunch/blur-vs-opensea
OpenSeaは期間限定で手数料を一切取りません。
これは、Blurが市場シェアを獲得するための積極的な動きに対抗する明らかな決断であり、緊急事態としての応急措置です。
さらにOpenseaがトークンのエアドロップを決定した場合、更なるマーケットプレイス競争が激化します。
現状でトークンをエアドロップするとすれば、Blurから買い手を引きはがすためでないといけません。その条件として考えられるのは、Blurや他のマーケットプレイスよりも低い価格で売りに出すことを選ぶでしょう。
そして、Blurも現在、次のエアドロップのイベント中です。もしそうなると、最悪の場合Floor priceが崩壊しはじめ、ほとんどのNFTプロジェクトの暴落が予想されます。
OpenseaやBlurは、Web3またはWeb2.5企業といわれていますが、実質的には中央集権であり、主要マーケットプレイスに依存しているクリエイターやコレクターは彼らの決定に振り回されています。
しかし市場規模からすると、まだこれらのマーケットプレイスに委ねざるを得ないのが現状です。
イーサリアム財団のウェブサイトに明記してある通り、NFTは多くのクリエイターに自律した新しい経済活動を生み出せるテクノロジーです。
力のない庶民が、権力から搾取されていたリソースを自分のものに取り戻して、下剋上を果たせるはずのものでした。
そして、NFTという投資可能で取引可能なオブジェクトが、OpenSeaやBlurなどのマーケットプレイスによって大きな取引市場が生まれました。
アートの世界において、史上初めて全世界で流動的な市場が実現したことになります。
しかし皮肉なことに、彼らが短期的な抗争を激化させれば、一時的な暴落、本当の意味での真冬相場がやってくるかもしれません。
楽観的に見れば、すでに多くの企業やビッグブレインも参入しており、彼らが新しい市場を築くための働きかけを行っていることも考えられます。
いずれにせよ、今起こっているマーケットプレイスの覇権争いは、NFT市場にとって大きな変革をもたらします。
InstagramやAmazonなどのWeb2ビッグテックの参入も視野に入れると、持続可能なNFTのエコシステムはどのようにして構築されていくのか、
私は今後も注目し、アップデートしていきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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